いい香りのいい話

橘の花の香りを嗅ぐと、昔恋しかった人の袖の香りを思い出す。これは『古今和歌集』に収められた夏の歌です。橘の香りが昔の恋人の記憶を呼び覚ますという、何ともロマンチックな歌ですね。

香りから記憶が蘇るという現象は、小説の中でも描かれています。マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』では、主人公がマドレーヌを紅茶に浸した香りで、幼い頃の記憶を鮮明に思い出す場面があります。この描写は非常に有名で、匂いが記憶を呼び起こす現象は「プルースト現象」と呼ばれるほどです。

香りはこれほどまでに記憶と強く結びつくのでしょうか?実は、その行き着く先は脳にある「扁桃核」という器官です。扁桃核は、記憶を司る「海馬」と密接に連携しているため、香りから過去の記憶が呼び起こされやすいと考えられています。

また、この扁桃核は「快・不快」を判断する場所でもあります。良い香りを嗅いで気分が良くなるのはこのためです。さらに、良い香りには実際に心身の調子を整える効果も期待できます。

良い香りの力を活用したものが「アロマセラピー」です。これは、植物由来の芳香成分(アロマオイル)を使って、心身の健康を促すものです。アロマオイルの芳香成分は、リラックス作用だけでなく、肩こり、不眠、ストレスによる不調の改善にも役立つと言われています。たとえば、お風呂にアロマオイルを数滴垂らすだけでも効果が期待できます。

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鍼灸マッサージ師をしています。
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