カカオマスは、チョコレートやココアの主成分です。カカオマスには、カカオポリフェノールやミネラル、食物繊維などが豊富に含まれています。これらの積極的な成分には、さまざまな健康効果があることが、多くの研究で明らかにされています。
【抗酸化作用が特徴カカオポリフェノール】
カカオマスは、チョコレートやココアパウダーの主成分であり、カカオ豆の胚乳を発酵および乾燥させた後に焙煎し、すりつぶしたものです(※1)。カカオマスには豊富な「カカオポリフェノール」が含まれており、これには動脈硬化の予防など、さまざまな健康効果があることが、国内外の多くの研究により明らかにされています。
この健康効果の理由の一つとして、カカオポリフェノールの持つ抗酸化作用が挙げられます。カカオポリフェノールは、老化やがん、生活習慣病などの要因となる活性酸素から体を守る役割を果たします。抗酸化作用を持つポリフェノールには、赤ワインやブルーベリーに含まれる「アントシアニン」、緑茶に含まれる「カテキン」、大豆に含まれる「イソフラボン」といった様々な種類がありますが、最近はカカオポリフェノールがチョコレートやココアなどの形で手軽に摂取できることに注目が集まっています。
さらに、カカオマスにはポリフェノール以外にも食物繊維やミネラル、たんぱく質などが豊富に含まれており、日常の食事だけでは不足しがちな栄養素を補うことができます。これにより、カカオマスは健康的な栄養素を効率的に摂取するための優れた選択肢となるのです。
【1日25g程度の高カカオチョコレートを】
カカオポリフェノールやカカオマスに含まれる栄養素を十分に吸収する方法は、70%以上のカカオ粉末を含んだ高カカオチョコレートを選ぶことです。このようなチョコレートはダーク(ビター、ブラック)チョコレートとも呼ばれています。
日本で初めて行われた大規模な調査(2014年)では、健康な日本人男女の45〜69歳の347人を対象に、カカオ含有量が72%の高カカオチョコレートを毎日25g摂取してもらいました。調査結果によると、摂取前と摂取後で体に次のような変化が見られました。
■対象とするチョコレートを用いた大規模調査の結果
・血圧が低下(血圧が高めの人ほど、正常血圧の人より低下幅が大きい)
・HDLコレステロール上昇
・動脈硬化の指標となる血管炎症や酸化ストレスの数値が低下
・脳や血液の中に多く存在するBDNFタンパク質増加(BDNFタンパク質:脳由来神経栄養因子と呼ばれるたんぱく質の一種で、神経細胞の成長や再生を促す物質
カカオ含有量が35~40%のミルクチョコレートを食べる場合、同じような効果を得るためには、摂取量を増やす必要があります。しかし、ミルクチョコレートにはダークチョコレートと比べて砂糖や油脂が多く含まれているため、たくさん食べるとカロリーオーバーになってしまい、太りやすくなるなどのリスクも高まります。
また、カカオマスを含まないホワイトチョコレートには、当然ながらほとんどカカオポリフェノールは含まれていません。したがって、高カカオチョコレートを摂取していても、食べ過ぎると肥満の原因になります。健康のためには、1日に摂取するチョコレートの量を25g程度にすることが良いでしょう。
【摂取は少量ずつ】
一般的に、ポリフェノールの一種であるカカオポリフェノールなどの抗酸化作用は、摂取後約2時間で最大となり、その後約4時間で徐々に消失していくと言われています。例えば、一度に25gの高カカオチョコレートを食べても、その抗酸化作用は一日中持続するわけではありません。ですから、数回に分けて摂取することが望ましい方法です。
最適な摂取タイミングは、朝食後から昼食までの間に1回、昼食後から夕食までの間にもう1回です。なぜなら、日中は仕事のストレスや紫外線、運動などによって活性酸素が発生しやすい状態にあります。体内の酸化を可能な限り抑えるためには、手軽に摂取できる少量の高カカオチョコレートを口にするのが効果的です。
さらに、チョコレートには集中力を維持したり、精神的なリラックス効果があることも、さまざまな研究によって確認されています。たとえば、3時間のパソコン作業を行う際に、チョコレートを摂取するグループと黒砂糖のお菓子を摂取するグループ、何も摂取しないグループに分けて行った研究では、作業開始時と作業後の疲労感を比較した結果、チョコレートを摂取したグループの疲労感は有意に低く、さらに集中力も有意に維持されていたと報告されています。
仕事中の疲れやイライラを軽減するためにも、適切なタイミングでチョコレートを摂取することをおすすめします。また、夜は日中よりも活性酸素が発生するリスクが少なくなるため、夕食後にチョコレートを摂取するのは避けましょう。なぜなら、夜は食べたものが代謝されにくく、体に蓄積されやすい傾向があるからです。ですから、夕食後はチョコレートの摂取を控えるようにしましょう。
【ナッツやドライフルーツと】
健康を促進するためには、高カカオチョコレートを摂取することが推奨されています。しかし、高カカオチョコレートをナッツ類やドライフルーツと組み合わせることで、より効率的に栄養を摂取することができます。特に、チョコレートと相性の良いナッツの中でもアーモンドには、カルシウムや鉄、亜鉛などのミネラル、食物繊維、そして抗酸化作用の高いビタミンEが豊富に含まれています。
さらに、チョコレートと相性の良いドライフルーツの中でも、干しブドウがあります。干しブドウは元となるブドウそのものにもたくさんのポリフェノールが含まれています。乾燥させることで栄養が凝縮され、より栄養価が高まります。ただし、干しブドウには果糖やブドウ糖も多く含まれているため、摂りすぎには注意が必要です。
【ピュアココアも効果的】
チョコレートを食べるだけでなく、カカオポリフェノールを摂取するためにはココアを飲むことも効果的です。おすすめはココアパウダーのみを原材料とした「ピュアココア」や「純ココア」です。これらは砂糖や乳糖、麦芽糖などの糖類や脱脂粉乳、全粉乳などが含まれていないため、カカオポリフェノールの含有量が高く、さらに糖質やカロリーの摂り過ぎを防ぐことができます。
ただし、健康のためだからといって、砂糖をまったく含まない苦いココアやチョコレートを無理に飲んだり食べたりする必要はありません。実際、16世紀のヨーロッパでは、カカオマスをお湯に溶かしたような苦い飲み物が薬として使われていたという記録がありますが、長い歴史の中で味を改良するためにさまざまな工夫が行われ、現在のような味わいになっているのです。
自分の好みに合わせて甘さを調整しながら、ピュアココアの摂取には注意が必要です。砂糖の摂り過ぎには気を付けてください。1日に2~3杯を目安に摂取すると良いでしょう。
チョコレートを見ると気分が高揚したり、温かいココアを飲むことで安らぎを感じることもありますが、これはチョコレートやココアの重要な効果の一つです。楽しみながら健康に役立てましょう。