【ゆっくり深い呼吸で自律神経を制御】
自律神経を制御することは難しいものですが、その中でも唯一の例外が呼吸です。呼吸を意識的に変えることで、自律神経の動きに影響を与えることができます。ゆっくりと深い呼吸をすることで、副交感神経の活動を増加させることができます。逆に、速く浅い呼吸は交感神経を優位に働かせます。そのため、心身をリラックスさせ、血流を促進するためには、ゆっくりと深い呼吸をすることが重要です。
自律神経のバランスを整える方法として、10秒呼吸法がおすすめです。この方法では、5秒かけて息を吐き、5秒かけて息を吸います。このようにすることで、呼吸のリズムが整い、副交感神経の活動を高める効果が期待できます。
また、背骨は自律神経の通り道ともいえるため、背中を柔らかくすることも効果的です。体を前に倒したり、後ろに反らせたりすることで、背骨の柔軟性を高めることができます。このような姿勢の変化によって、自律神経がスムーズに行き来できる状態を作ることができます。
【好きな香りを取り入れる】
香りは自律神経にも効果を及ぼします。精油の香りが自律神経に与える影響については、多くの研究が行われています。日本人を対象としたある研究では、ラベンダーの香りが与えられた後、平均血圧や最低血圧、唾液中のストレス関連酵素であるアミラーゼが減少したことが報告されました。これにより、副交感神経が優位になり、リラックスした状態になると推測されます。
嗅覚は感情を制御する大脳辺縁系に直接結びついており、香りの種類によっては交感神経を活性化させて「やる気モード」に切り替えるものや、副交感神経を刺激して「リラックスモード」に切り替えるものがあります。一般的に、ラベンダーの香りはリラックスを促し、レモンなどの柑橘系の香りは覚醒を促すとされていますが、自分が心地よいと感じる香りを取り入れることで、自律神経に良い影響を与えることが考えられます。
音は、私たちの生活や健康にも影響を与えることがあります。たとえば、救急車のサイレンや騒々しい音など、不安を感じさせる音や不快な音は、私たちにストレスを与える要因となることもあるのです。そのため、できるだけ快適な環境を作るために、自分自身で環境を変えたり、気分をリラックスさせるために自分に合った音楽を流したりするなどの工夫が重要です。
【とりあえず放っておく、のも解消法】
自律神経を乱す原因であるストレスは様々な形がありますが、特に精神的なストレスに対処することが難しい人は多いかもしれません。実は精神的なストレスには大きく分けて次の2つのタイプがあります。
一つ目は「自分の努力で解消できるストレス」です。具体例としては、「仕事が多くてストレスが溜まるけれど、一つずつ仕事を片付けることでスッキリした」といった場合です。つまり、やるべきことを着実にこなすことで、ストレスを解消することができます。
もう一つは「自分の努力ではどうしようもない不安や心配」です。具体例としては、「仕事の先行きが不透明で、不安ばかりが募ってしまう」といった場合です。このようなストレスは自分の力では解決できないものであり、対処することが難しいです。
自律神経を自分でコントロールするためには、特に「自分の努力でどうしようもないストレス」に対処する方法を知っておきましょう。対処法として挙げられる2つのポイントがあります。
まず、不安や緊張、イライラなどの不快な感情が湧いたときは、必ずしも無理に気分を変える必要はありません。そのまま感じたままに自分に許可を与え、放っておくことも大切です。
そして、その状況において自分の前にある「やらなければならないこと」に意識やエネルギーを向け、実際に行動に移すことです。自分がコントロールできる範囲内でできることを着実に進めることが、ストレスを軽減する手段の一つです。
このようなアプローチを取ることで、自律神経をコントロールするのに役立つでしょう。特に、「自分の努力ではどうすることもできないストレス」に対しては、これらのポイントを意識して行動することが重要です。
不安や緊張、イライラといった感情は、なかなか消すことができません。実際、これらの感情を消そうと「イライラしないようにしよう」と気を遣えば遣うほど、感情は大きくなり、ストレスの原因になってしまいます。だからこそ、わざと気分を変えようとはせず、目の前にあるやらなければならないことに集中します。
たとえば、不快な気持ちを持ちながらも、通勤のために電車に乗らなければならないという状況が目の前にあるなら、自分の意識を電車に向け、実際に電車に乗る行動を起こします。不安やイライラで封じ込められていた心が動き出し、不快な感情は次第に小さくなっていきます。いつの間にか気分も変わってきます。