代は長寿社会となり、「100歳まで生きる」ということが珍しくなくなってきました。このような長い人生を楽しく健康に過ごすためには、口の中の健康をしっかりと保つことが非常に重要だということがわかっています。
口の健康を保つために大切なことは、毎日の生活の中で歯周病を予防することと、噛む力や唾液の分泌力など、口の中の機能を一生涯維持すること、つまりオーラルフレイル(口腔の虚弱状態)を防ぐことです。
歯周病は、歯を失うだけでなく、全身にさまざまな病気をもたらす原因にもなります。さらに、オーラルフレイルを防ぐことで、全身の虚弱状態も予防する可能性があるのです。
若い時から自分の歯をしっかりと保護することが、長い人生を楽しく健康に送るためには欠かせません。
【お口の状態が心身の健康や社会性に直結する】
食べることは生きることとも言えるでしょう。この言葉は、食事と生命の関係を強調したものであり、私たちの健康や長寿にも深く影響を及ぼします。
人間の体は、口から摂取する栄養物によって形成されています。健康を維持するためには、適切な栄養を摂取することが非常に重要です。そのためには、しっかりと歯を使って食べ物を噛むことが欠かせません。
さらに詳しく言えば、栄養を体に取り入れる際に、自分の歯でしっかりと噛むことによって食物が細かく分解され、消化吸収がスムーズに行われます。このようにして、体が必要とする栄養素を効率よく取り入れることができ、健康状態を維持することができるのです。
食事は単なる満腹感を得るためだけでなく、私たちの生命活動を支える重要な要素なのです。そのため、食べることを通じて健康的な生活を送るためには、食事の質や噛むことの大切さを理解し、実践することが欠かせません。
たとえば、筋肉を形成するたんぱく質は、弾力があり、噛んだ時にしっかりとした食感の赤身肉などに豊富に含まれています。しかし、歯に痛みがあったり、歯肉が腫れたり、歯がグラグラするなどの問題があると、食事をしっかり噛むことが難しくなります。その結果、固いお肉や歯ごたえのある野菜なども避けるようになります。このことで、やわらかくて簡単に噛むことができる豆腐や卵料理などの食事が好まれるようになり、口に合わない料理や食材を避けることで、食事のバランスが偏り、美味しい食事を楽しむことが難しくなります。
食事がうまく取れないと、体に必要な栄養素が不足しやすくなります。特にたんぱく質やビタミン、ミネラルなどが足りなくなると、筋肉量の減少や身体の健康を保つうえで必要な栄養素不足のリスクが高まります。このような「栄養不足」の状態が長く続くと、筋力や身体活動が低下し、体重が減少するなど、身体や心が衰えた状態である「フレイル(虚弱)」へと向かう可能性があります。
さらに、食事を楽しめなくなると、他の人と同じ食事を摂取できないことがストレスとなり、外食や旅行に参加することが躊躇される場面も増えるかもしれません。また、精神面や人間関係にも影響が及ぶ可能性があります。
口の健康は身体だけでなく、人間関係やコミュニケーションにも大きく関わっており、生活の質(QOL)にも影響を及ぼすことを忘れてはいけません。