人間関係が希薄であることは、健康にとって大きなリスク要因となります。2010年に発表されたある研究では、社会的つながりが少ないことの死亡リスクは、喫煙や飲酒、肥満に匹敵するか、それ以上に大きいことが示されました。また、つながりが少ないと、脳卒中、心疾患、認知症といった病気のリスクが高まるという研究結果もあります。これらのことから、人間はつながりがある方が、また、そのつながりが多ければ多いほど、健康に良い影響があると言えるでしょう。
なぜ人間関係が健康に影響を与えるのでしょうか。その理由の一つは、人間が本来的に社会的な生き物であるためです。歴史を振り返ると、人類は狩猟採集の時代から集団で生活し、互いに助け合ってきました。このため、一人でいることは潜在的な危険を意味すると認識されてきました。現代社会においても、人間関係が希薄だとストレスを感じやすくなり、そのストレスが心身の健康に悪影響を及ぼすと考えられています。
さらに重要な要素として、「ソーシャルサポート」(社会的なつながりの中で得られる支援)が挙げられます。誰かとつながっていれば、困ったときに助けを求めたり、支援を受けたりする機会が増えます。「いざというときに誰かが助けてくれるかもしれない」という安心感が得られるのです。しかし、つながりが少ないと、こうした支援を受けられる機会も減少します。「もしかしたら誰も助けてくれないかもしれない」という不安やストレスが募ることで、健康状態に影響が出ると考えられています。