「太陽の光を浴びることが大切」という言葉を聞いたことがありますか。普段私たちが浴びている光は、私たちの体内時計を調整し、朝目を覚ます時には夜には眠りたくなるようなリズムを作るのに非常に重要な要素なのです。
しかしそれだけではなく、光が身体に与える影響は他にもたくさんあることが分かってきています。奈良県立医科大学の研究グループは、研究者たちが2010年から「平城京スタディ」という研究を進めています。この研究では約3000人の参加者の自宅を訪れ、寝室に照度計を設置したり、手首に腕時計型の照度計を着用してもらったりして、日常生活の中でどのような光を浴びているかに関するデータを収集し、光が健康にどのような影響を及ぼすのかを調査しているのです。
これまでに行われた研究から、いくつかの興味深い結果が明らかになっています。たとえば、就寝中に体が受ける光の量が多い人ほど、うつ症状や糖尿病の発症率が高く、動脈硬化の進行も早いことがわかりました。就寝時の光環境が睡眠障害や全身性炎症、肥満、脂質異常症といった健康問題と関連しており、光を多く浴びる人ほど、これらの病態にかかる可能性が高いという結果が示されています。さらに、約2年間にわたって被験者を追跡した結果、夜間に光をたくさん浴びるだけでなく、昼間に光をあまり浴びない人や、夕方以降に光を多く浴びる人も、太りやすい傾向にあることが明らかになりました。つまり、光の浴びる時間帯や量によって、様々な影響が現れることが分かっています。