大人に起こる危険な鼻血に気をつけよう

鼻の粘膜には、多くの血管が密集しているため、わずかな刺激や傷でも出血しやすい傾向があります。しかし、鼻血を軽視することは避けた方が良いです。なぜなら、鼻血には重大な病気が隠れている可能性もあるからです。「たかが鼻血」と見過ごさず、慎重に対応する必要があります。

【一般的な鼻血の原因】

鼻血は、鼻を力強くかんだり、ぶつけたり、鼻の穴を指でいじったり、鼻毛を抜いたりすることによって引き起こされることがほとんどです。鼻血は、鼻の穴を左右に分ける壁である鼻中隔の入口にある「キーゼルバッハ部位」から出血が起こります。キーゼルバッハ部位は、鼻の穴から約1~2cmの位置にあり、指を少し入れると触れることができます。この部位には多くの静脈や毛細血管が集中しており、粘膜も非常に薄いため、傷つけると出血しやすい傾向にあります。

子供の時に鼻血がよく出たという経験をした人や、自分の子供がよく鼻血を出すという親御さんもたくさんいます。その理由は、子供の方が大人よりも鼻の粘膜が薄いため、わずかな刺激でも傷ついて出血しやすいからです。子供の鼻血も含めて、鼻の粘膜が傷つくことによる鼻血は一時的なものがほとんどです。それは短時間で止まるため、あまり心配する必要はありません。ただし、鼻の穴をよくいじったり、鼻毛を強く引っ張ったりするような癖がある場合は、控えた方が良いでしょう。また、冬のように空気が冷たく乾燥する時には、鼻の粘膜の表面にある粘液も乾いて傷つきやすくなることがあります。ですので、マスクをすることは鼻の粘膜を保護するのに役立つと考えられます。

ちなみに、「チョコレートやピーナッツを食べ過ぎると鼻血が出る」といった説は古くから聞かれますが、医学的な根拠はありません。

【鼻血の止め方の間違いと正解】

鼻血が出た場合、適切な方法で速やかに止血することが非常に重要です。実は、鼻血を止めようとして間違った方法を選ぶケースが非常に多いのです。具体的な間違いの例を以下にご紹介します。

【間違い例1・ティッシュを鼻の穴に詰める】
ティッシュを鼻の穴に詰めることで、血が出てくる経路が制限されてしまい、止血が困難になる可能性があります。さらに、ティッシュの繊維などが鼻の粘膜を傷つけ、出血を増やすこともあります。また、ティッシュを取り出す際には、かさぶたを剥がしてしまうリスクもありますので注意が必要です。

【間違い例2・上を向く】
鼻血が出た時に上を向くと、血液がのどに流れてしまい、飲み込んでしまうことがあります。この場合、血液中の鉄分が胃で酸化してしまい、嘔吐を起こす原因になる可能性があります。さらに、横になっている状態で上を向くと、吐しゃ物がのどに詰まる危険性があり、窒息の原因になる可能性もあります。そのため、鼻血が出た場合には上を向くことを避けることが重要です。

【間違い例3・首を叩く、鼻を冷やす】

鼻血が出た時、首を叩いたり鼻を冷やすと、鼻血が止まりやすいという説が存在しますが、実は科学的な根拠はなく、そのような方法による効果は期待できません。

では、本当に効果的な鼻血の止め方はどのようなものなのでしょうか。その答えは以下の通りです。

★鼻血を止めるための正しい方法
1. 椅子などに座る
(体調や介護状態などで起き上がることができない場合を除き、横になることは避ける)
2. 少し前かがみになり、出血している側の小鼻(鼻のふくらみのある部分)を指でしっかりと押さえる
3. 約5分間、指を離さずにしっかりと押さえ続ける
通常の場合、この方法によって鼻血は止まります。しかし、5分程度で血が止まらない場合、鼻血が「危険な鼻血」と考えられます。

【危険な鼻血の症状】

危険な鼻血とは、以前言及したキーゼルバッハ部位からの出血だけではなく、鼻腔の奥にある蝶口蓋動脈や上方の前篩骨動脈などからの出血も含まれます。これらの動脈から出血する場合、血液の量が非常に多く、タオルを鼻に押し当てると直ちに真っ赤に染まってしまう状態になります。

高血圧の場合、動脈性の出血が起こりやすくなります。また、出血した際の勢いが強いため、出血が止まりにくくなることがあります。

さらに、次のような病気の場合も、鼻血が出やすくなったり、止まりにくくなったりすることがあります。

– 肝臓の病気である肝硬変など、凝固因子(血液を固めるための物質)の産生が困難になる場合
– 白血病など血小板が減少する病気や、血友病のように生まれつき凝固因子が不足している血液の病気
– 腎臓の慢性疾患である腎不全など、鼻出血を止めるために必要なタンパク質を作ることができない場合
– 鼻腔や副鼻腔にできる腫瘍の病気

肝臓や血液、腎臓の病気が原因の鼻血の場合、大量の出血ではなく、じわじわとした出血が長時間続くことが特徴です。

また、血管に異常が起こる難病である「オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症)」では、鼻血の出血が頻繁に起こりやすくなります。この病気に罹っている場合、鼻血を止めるのが困難なことがあります。

さらに、脳梗塞や心筋梗塞などの治療のために、血液をサラサラにする効果がある抗血小板薬や抗凝固薬を服用している場合も、鼻血が出た場合に止血が困難になる原因となります。

以下の症状がある場合は、迅速に耳鼻咽喉科を受診する必要があります。

・適切な止血法を試したにもかかわらず、出血が5分以上止まらない
・明らかに多量の出血がある
・短期間に何度も鼻血がくり返す(毎日や1日おきなど)
・他の部位からの出血もみられる(例:歯ぐきからの出血)
・青ざめた顔色がみられる
・鼻血に加えて発熱もある
・出血の勢いが強く、鼻を押さえつけていても血がのどに流れ込む

医療機関では、まず止血処置を行いますが、医師の診断により鼻の腫瘍など、潜在的な病気が発見されることもあります。病気の早期発見と早期治療のためにも、何か異常を感じた場合は、迅速に医療機関を受診することが重要です。

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