大腸がん増加の背景とその予防

【大腸がん増加の背景とその予防】

大腸がんに罹る人数は近年、増加傾向にあります。2014年に診断されたがんの中では、男女とも第1位でした(国立がん研究センター「地域がん登録全国合計値」)。大腸がんによる死亡も年々増えています。胃がんや肝臓がんの死亡数が減っていく傾向にあるのとは対照的です。厚生労働省「平成29年(2017)人口動態統計によると、女性の大腸がんは、がんの中で死亡原因の第1位。男性では、肺がん、胃がんについで、大腸がんは第3位でした。男女合わせると、肺がんに次いで第2位の死亡数となっています。

【大腸がんという病気】

大腸がんは、長さ約2メートルの大腸(結腸・直腸・肛門から構成されています)に発生するがんです。日本人の場合、結腸の中のS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。血便や下血、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、排便時の腹痛、貧血、原因不明の体重減少といった症状が共通しており、血便が最もよくみられます。ただし、日本人に多い痔などの良性疾患も同じような症状があります。

大腸がんは、できている場所や程度により、症状が異なります。病状によっては、腸管が完全にふさがり、便やガスが出ずにお腹がパンパンに張る腸閉塞を起こすこともあります。この場合は緊急手術が必要です。早期発見のためには、早めに医療機関を受診する必要があります。

【自覚症状がほとんどない早期の大腸がん】

大腸がんは、早期がんから進行がんへ進みます。早期がんはポリープから発生するものと、正常の粘膜から発生するものがあります。早期の大腸がんは症状が現れにくいため、自覚症状が出たときにはかなり進行していることも少なくないのです。早期発見のためには、気になる症状がなくても「大腸がん検診」をぜひ、毎年受診しましょう。そして便潜血検査で陽性が出たら、精密検査を受けてください。

大腸がんは検査で早期がんで発見された場合は、100%に近い割合で完治するといわれています。進行がんであっても検診で発見された早期のものは、内視鏡で病巣を比較的簡単に切除できるため、高い確率で治癒します。進行具合によって外科手術や抗がん剤、放射線治療などが、施されます。

【ポリープのなかにがんが発見される場合もある】

検査によってポリープが発見されることがあります。ポリープとは、腸管壁の粘膜面に肉眼でわかるくらいに隆起したものです。粘膜面は腸管の一番内側で、腸の内容物と接しており、消化物の水分の吸収や粘液を分泌する機能をもつ細胞からできています。

この粘膜の細胞が突然増え始め、盛り上がったものがポリープです。ポリープにはかんが疑われるもの、ポリープの中にがんがあるものもあります。ポリープは種類と大きさに応じ、治療法が決まります。

【大腸がん増加の背景】

元々、日本人には胃がんが多く、欧米人には大腸がんが多い、といわれてきました。ところが近年では、男女ともに大腸がん死亡者数が増え続けています。最大原因として考えられるのは、日本人の生活環境、とくに食事の欧米化です。そのほか、飲酒、喫煙、身体活動があります。

日本人でも、ハワイやアメリカに移住した人は、胃がんが減り、大腸がんが増えました。この調査・研究から、がんの発生には人種や遺伝的要因より、食事など環境要因が大きくかかわっていることが明らかになりました。

欧米化した食生活、なかでもベーコンやソーセージなどの加工肉を毎日継続して50g摂取すると、大腸がんのリスクが18%増加するというデータが、2015年に国際がん研究機関から発表されました。また、赤身肉も、大腸がんのリスクの可能性が指摘されています。バランスの良い食生活を心がけることが大切です。

【大腸がんは予防できる】

大腸がん検診としては、便潜血検査の有効性が世界的に認められています。大腸がんの多くは、大腸腺腫と呼ばれる大腸ポリープが発育して、だんだんと大腸がんへとなっていくことが知られています。便潜血検査は大腸がん検診として行われますが、大腸がんを発見することだけでなく、大腸がんの芽である、大腸腺腫の発見が目的でもあります。大腸腺腫を切除することで、大腸がんの芽を摘んでしまうことが可能なのです。この方法により、多くの大腸がんを予防することができます。

【便潜血陽性だったら精密検査受診】

40歳代、50歳代は、がん年齢といわれ、がんにかかるリスクは、加齢とともに高まっていきます。早期発見により、完治できる場合も増えています。

便潜血検査を受け、1回でも便潜血が陽性だったら、必ず精密検査を受診してください。一次検診である便潜血検査で引っかかると、大腸内視鏡検査などの精密検査が推奨されています。精密検査により、大腸がん、あるいは今後大腸がんになり得る、大腸腺腫を発見することができます。自治体や職場でのがん検診をしっかり受診し、ぜひ、大腸がんの早期発見、早期治療を目指しましょう。

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