腱鞘炎は、骨と筋肉をつなぐ腱を覆う腱鞘という組織に炎症が生じる疾患です。手指、手首、肘など、様々な部位に起こり得ます。その主な原因は、患部の使い過ぎによる負担の蓄積です。
例えば、手首の腱鞘炎では、手首を手の甲側に反らす動作の繰り返しにより、主に手首の甲側や指の付け根に痛みが現れます。パソコンのマウスやキーボード操作など、手首や指を頻繁に使う方に多く見られます。
スポーツによる痛みとして知られる「テニス肘(外側上顆炎)」も、実は手首への過度な負担が原因となることがあります。手や手首を甲側に反らす動きによって筋肉が収縮すると、肘の外側の骨の突出部(外側上顆)に牽引力が加わります。この力が繰り返し加わることで、外側上顆に炎症や微細な損傷が生じ、手首を反らす際に痛みを感じるようになるのです。
ライフステージに目を向けると、授乳期の女性は腱鞘炎を発症しやすい傾向にあります。その要因の一つとして、赤ちゃんを抱っこするなどによる腕や手首への過剰な負荷が挙げられます。
もう一つの要因は、女性ホルモンの変動です。出産後数週間は女性ホルモンの分泌量が著しく低下します。女性ホルモンには、関節を支える軟骨や筋肉の衰えを抑制する働きがあるため、「過剰な負荷」と「女性ホルモンの減少」が重なることで、腱鞘炎のリスクが高まるのです。
加えて、授乳期には、おむつ替えなどのお世話で腰をかがめる姿勢が多くなるため、腰痛を併発する方も少なくありません。睡眠不足による疲労の蓄積も、腰痛の一因となる可能性があります。