歯周病は、単なる歯を失う原因ではなく、さまざまな全身の病気と関連があることが多くの研究によって明らかにされています。特に、生活習慣病のリスクが高まる老化に伴うさまざまな疾患と歯周病の進行には密接な関係があるとされています。
歯周病が全身に影響を与えるメカニズムとして、大きく次の3つが考えられています。
1.歯周病の原因となる菌が血液を通じて体中に広がることがある。
2.歯周病によって引き起こされる炎症を促す物質である「炎症性サイトカイン」が血液を通じて体中に運ばれることがある。
3.歯周病によって腸内に生息するさまざまな細菌のバランスである「腸内細菌叢」が変化することがある。
歯茎の上皮は、通常、体内に病原菌が侵入するのを防ぐバリア機能を持っています。しかし、歯周病の病原菌は、細胞と細胞の間の「細胞間隙」を分解して侵入することができるばかりか、細胞内に侵入することも可能です。歯周病の病原菌が歯周組織内に侵入すると、血管を通じて血液中に入り、全身に広がってしまいます。
さらに、歯周病の病原菌が歯茎に炎症を引き起こすと、炎症を促進するサイトカインと呼ばれる物質が生成されます。このサイトカインも血液にのって全身に運ばれ、さまざまな臓器で炎症を引き起こす原因となります。
さらに、マウスに歯周病の病原菌を大量に投与し、腸内に到達させると、腸内の細菌叢が変化することが明らかになりました。その結果、腸内のバリア機能が低下し、さまざまな臓器で炎症が引き起こされるという国内の研究結果も報告されています。