【皮下脂肪との違い】
人間の脂肪の大半は、皮膚の下にある皮下脂肪と、からだの中にある内臓脂肪です。内臓脂肪は、イメージ的に、肝臓など臓器の周りを取り囲むようについている脂肪のように思われがちです。実際は大網脂肪(たいもうしぼう)や腸間膜脂肪(ちょうかんまくしぼう)と言われる、胃や腸の周りにある脂肪がその代表です。
内臓脂肪は、皮下脂肪に比べて1つの細胞あたりの脂肪細胞のサイズが小さく、逆に代謝活性は高くなります。これは、内臓脂肪が、胃や腸と深く結びついていて、肝臓に流入する門脈(もんみゃく)という太い静脈を通して、肝臓に遊離脂肪酸や糖分などのエネルギー源を送ることができるからです。そのため、エネルギーの出し入れがとてもしやすい。そのため、内臓脂肪は食べ過ぎるとすぐに増えていき、食事制限をすると内臓脂肪から減ってきます。預金に例えると、内臓脂肪=普通預金、皮下脂肪=定期預金ということになります。
この内臓脂肪は、脂肪細胞からさまざまな物質を産生、分泌しています。食べ過ぎで脂肪細胞が大きくなると、この物質の分泌異常が生じ、血糖や脂質の異常をきたしていきます。つまり、メタボになりやすいのです。お腹のポッコリとしたリンゴ型の体型の人に多いのですが、ダイエット効果は高く、ダイエットのための食事改善や運動で、内臓脂肪は減りやすいのです。
一方、皮下脂肪は、外部からの外圧に対するクッション的役割や、寒さ対策の役割を担っています。下半身に脂肪がついた洋ナシ型の体型の人が多いのです。皮下脂肪が異常に増えていくと見た目だけでなく、膝や腰などを痛めたりする整形外科的疾患のリスクが高まります。なお、女性は皮下脂肪が多く、男性は内臓脂肪がつきやすいことがわかっています。更年期以降は女性も内臓脂肪がつきやすくなるので要注意です。
【内臓脂肪が多い人の特徴】
・過食、脂質や糖質の摂取量が多い
・加齢や閉経による代謝量の減少
・睡眠不足
・アルコールの飲みすぎ
・食べるのが早い
・運動不足
・夜型の生活
【過食、脂質や糖質の摂取量が多い】
内臓脂肪が増える主な原因の一つが、過食。食物から摂るカロリーが、運動で消費するカロリーより多いと、余剰分のカロリーは脂肪として蓄えられます。 全ての栄養素にカロリーがあるのではありません。体のエネルギーとなるのは糖質(炭水化物)、脂質、たんぱく質の3種類の、エネルギー産生栄養素です。
エネルギー産生栄養素は体にとって重要なエネルギー源です。その半面、摂りすぎると肥満の原因になります。 摂り過ぎないように注意しなければならないのが脂質と糖質で、余分に摂取すると体脂肪として体に蓄えられてしまいます。
また脂質の過剰摂取は、中性脂肪の増加やコレステロールなどの血中濃度の上昇をひき起こします。動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞などの循環器疾患の原因となっていきます。
【加齢や閉経による代謝量の減少】
基礎代謝量の低下は、内臓脂肪がつきやすくなる原因の一つです。 加齢や閉経とともに基礎代謝量は低下していきます。基礎代謝量が減ると全体のエネルギー消費量も下がっていき、使い切れないエネルギーが脂肪として蓄えられやすくなります。中高年男性は、特におなか周りに内臓脂肪がつきがちになります。
【睡眠不足】
睡眠不足も、内臓脂肪を増やす原因の一つですといわれています。十分な睡眠は、自律神経を整え、ホルモン分泌を正常に保つ上で非常に重要です。2日間の寝不足で食欲を抑制するホルモン、レプチンの働きが弱まります。逆に食欲を増進するホルモン、グレリンが優位になることが明らかにされています。たった2日間の寝不足でさえ食欲の正常なコントロールを失わせるのです。
【アルコールの飲み過ぎ】
アルコールも内臓脂肪を増やします。アルコールのカロリーは蓄えられにくいのですが、一般的なアルコール飲料にはアルコール以外の糖質やたんぱく質が含まれています。結果的に、カロリーを摂取することになってしまいます。
【内臓脂肪の測定】
内臓脂肪面積が100平方センチメートルを超えると、内臓脂肪型肥満と判定されます。ウエストの周囲径でいうと、男性なら85cm、女性なら90cmが内臓脂肪面積100平方センチメートルに相当しますが、ウエスト周囲径だけでは、皮下脂肪が多いのか、内臓脂肪が多いのか、区別はつきません。腹部CTスキャンで計測すると皮下脂肪と内臓脂肪を区別して測ることができます。ただし、放射線の影響が懸念されるため、頻発測定は困難です。
最近では、微弱な電気を体に流し、生体の特性から体脂肪率を割り出してくるという、腹部生体インピーダンス法で、簡単に測定することができるようになりました。下腹がおおきくせり出してきた方は、内臓脂肪が異常に溜まっているかもしれません。腹部CTスキャンや腹部生体インピーダンス法で測定し、内臓脂肪の蓄積具合をチェックしてみてはいかがでしょうか。