笑いが病気を治癒させるのには、医学的な視点から考えると、呼吸器系と免疫系の2つの側面で関連があることが理解されています。
ますは呼吸器系の観点から見てみましょう。笑うときには、お腹に力を入れて短く息を吐くことがあります。この行為は、腹式呼吸と呼ばれる呼吸法と同じです。通常、胸式呼吸ではおおよそ500mLの空気を吸い込みますが、腹式呼吸では最大で2000mLもの空気を吸い込むことができます。そのため、笑いによって大きな声で息を繰り返すことで体内に蓄積した二酸化炭素が排出され、多くの酸素が体内に取り込まれやすくなります。そして、肺胞の表面からプロスタグランジンという物質が分泌され、これは血管を拡張させて血圧を下げる効果があります。さらに、興奮状態において分泌されるノルアドレナリンというホルモンの分泌も抑制されるため、笑いによる呼吸の影響により、身体のさまざまな不調が整えられるのです。
次に免疫系の観点から興味深い研究があります。ある実験において、寄席を鑑賞したお客さんの中で、がんと闘う重要な免疫細胞であるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性が調査されました。その結果、大笑いをした後の方が、はるかにNK細胞が活性化されていることが明らかになりました。別の研究でも、お笑いを見た後のNK細胞の活性化について調査したところ、全体的な平均値が開演前と比べて約35%~45%向上していることが示され、中には50%近く活性化が高まっている人もいました。一方、NK細胞の活性を向上させるために薬剤を使用する場合、有効な効果を見るまでには約3日かかると言われていますが、笑いによる免疫系の機能向上効果は短時間で現れることが示されました。