日差しが強くなる季節、紫外線の影響を受けるのは肌だけではありません。目も紫外線によってダメージを受け、白内障などの病気のリスクにつながることもあります。
【目に紫外線を浴び続けると】
紫外線は1年中降り注いでいます。皮膚だけでなく、目も紫外線を浴びています。目に当たった紫外線は主に角膜(黒目)で吸収されますが、吸収しきれなかった紫外線は、水晶体や網膜などの目の奥まで到達し、目の健康に影響を及ぼすことがあります。
紫外線の影響で生じる目の障害には、急性と慢性があります。急性の障害には「結膜充血」があります。山や海に出かけたときに目が充血すると、ほこりの刺激かな、と誤解されることが多いのですが、実は紫外線の影響の場合が大半です。これは目の日焼けのようなもので、たいてい一晩で回復します。しかし、炎症がひどいと、角膜の表面が剥がれ、強い痛みと涙が出る「紫外線角膜炎(雪眼炎)」になることもあります。スキー場や夏の海などでは、太陽光の反射で、多くの紫外線を目に浴びることがあるため、紫外線対策が足りないとこうした障害が生じやすくなります。
急性障害を繰り返していると、慢性的な障害につながります。慢性障害で最も多いのは、白目の一部がシミのように黄色く濁って盛り上がる「瞼裂斑(けんれつはん)」と呼ばれるものです。
老眼や白内障にも紫外線が関係していることがわかってきました。目の中のレンズである水晶体が硬くなってピント調節がしづらい状態になるのが老眼で、白内障は水晶体が白く濁った状態です。強い紫外線を長期間浴びると、水晶体のたんぱく質が変性し、早いうちに老眼や白内障になりやすいことが報告されています。
【子どものときに浴びた紫外線】
紫外線が強い地域の居住者はリスクが高くなります。
瞼裂斑にかかった子どもの割合を地域別に比較した調査では、石川県の小学6年生が約3%だったのに対して、沖縄県の西表島の小学6年生は70%以上と、大きな違いがあることがわかっています。また、高校まで沖縄在住の人と、成人してから沖縄に移住してきた人を比較した調査では、前者のほうが後者より翼状片のリスクが約6倍高いという結果が報告されています。子どもの頃に紫外線を多く浴びることは、大人になったときに現れる影響も大きいことを示しています。
屋外活動が多い仕事・スポーツなどをしている場合も、紫外線を多く浴びることになります。また、彫りの深い人は、紫外線を遮りやすいのです。
将来の目の病気を防ぐためにも、子どもの頃からしっかりと紫外線対策を行うことが重要です。紫外線が強いのは太陽の高度が高い季節や時間帯ですが、天空の散乱光や地表からの反射光も合わさって目に影響を与えますので、1日中、1年中、対策が必要です。
【紫外線から目を守る】
紫外線対策として最も有効なのは、UVカット機能付きのソフトコンタクトレンズです。サングラスや帽子と併用すると、さらに効果的です。
サングラスやメガネは単独で使っても有効です。側面の隙間から紫外線が入り込むので、なるべくツルが太いもの、レンズの大きいもの、ゴーグルに近い顔にフィットした形のものがおすすめです。できれば帽子も併用するのが望ましいでしょう。色の濃いレンズは視界が暗くなることで瞳孔が開き、レンズと顔面の隙間から入る紫外線が目の奥に届いてしまいますので、外側から目が見えるくらい薄い色のレンズが良いのです。
なお、日傘は暑さ対策にはなりますが、目に浴びる紫外線をカットする効果としては期待できません。目薬も充血をとることはできても根本的な対策にはなりません。
【目のケア(当院の場合)】
疲れ目や眼精疲労を訴える方には、鍼やお灸でケアを行っています。鍼の場合は、美容鍼で用いる短い鍼を目の周囲や眉毛上に、細心の注意をはらって刺鍼します。顔以外では、眼精疲労に効果のある背中のツボや手足のツボを使います。
お灸の場合は、大きいクルミの殻の上にもぐさを置く、くるみ灸がおすすめです。眼精疲労に効果の高い菊花茶に浸したくるみを用いますので、菊花茶の成分とお灸の熱が目の回復を促します。また、セラミック電子温灸器でお顔を温めるのもスッキリして効果的です。