【老年症候群の定義】
老年症候群とは、加齢に伴ってみられてくる、医師による診察、看護、介護を必要とする症状などの総称です。老年症候群の症状などは50項目以上があります。
【老年症候群の特徴】
老年症候群の特徴は、いくつもの症状が重なっていることが多いということです。そのため高齢者は、循環器科・消化器科・呼吸器科・神経内科などの診療科が分かれている総合病院などを受診すると、複数の診療科を受診しなければならないことがよくあります。
また、もともとは1つの病気で病院を受診していても、合併症があらわれてくると合併症の専門科を受診する必要が出てきて、やはり複数の科に受診しなければならなくなります。
【他の病気と異なる点】
2つの状態が混じっています。
①生理的老化
生理的老化は、病気による老化ではなく、加齢により誰にでも起きる変化のことです。だんだん耳が聞こえづらくなったり、夕方になると目が見えにくくなったり、就寝中のトイレの回数が多くなったり、坂道を上ると息が切れたり、小さな物忘れが多くなる、などがあります。
②病的老化
疾患やケガなどによっておきる症状のこと。この病的老化は、合併症の症状として考えられるもの、いくつもの臓器の疾患の影響や、社会的な条件に影響されて現われてくる二次的な症状があります。
老年症候群には、この2つ、生理的老化と病的老化が混じりあっているのです。ある老年症候群の症状があらわれたとき、その症状が病気の治療で改善できるのか、それとも生理的老化だとか、元の病気が治せないため改善が期待できないものなのか、を正しく理解することが重要となってきます。
【廃用症候群】
廃用症候群とは、病気やけがなどで安静状態を続けたため、体を動かす時間・強さが減っていき、体や精神に不都合な変化が起こった状態です。
介護が必要な高齢者、脳卒中などで寝たきりになった人に多く起こります。大きな病気や、大きな手術を受けた場合などは、元気な大人や子どもでも起こることがあります。理解と対策が、長期療養の場合重要になります。
■比較的短期で出現する状態
・褥瘡(床ずれ)
・誤嚥
・失禁
■月単位で出現する状態
・筋委縮
・関節拘縮(関節が硬くなる)
■年単位で出現する状態
認知機能低下
■終末期に出現する状態
・顔色不良
・傾眠
・呼びかけにこたえる時間が短くなる、注意力障害
・時間や場所が分からなくなる、見当識障害
・飲水や食事の減少
・嚥下困難
これらの症状は終末期に現れます。他の病気でも起こることがあります。
【老年症候群と関連する病気】
■ホルモンの減少
精力の低下、認知判断力の低下、うつ、筋力低下などの一部は老化に伴うホルモン減少と関連している場合があります。最近では男性更年期や男性ホルモン欠乏(LOH症候群)が注目されています。
■ビンスワンガー白質脳症
高齢者以外でも老年症候群の症状がみられる病気です。50歳代でも、尿失禁・認知症・妄想・歩行障害・転倒・誤嚥などの症状があらわれます。
【老年症候群の危険因子と予防】
■日常生活動作が低下する危険性が2倍に増える因子
・認知機能・視力・聴力の低下
・転倒
・うつ
・女性
■日常生活動作が低下する危険性が5倍に増える因子
・脳血管障害
■寝たきりの危険性を半分にできる
・適度な飲酒(日本酒1合まで)
・長寿教室への参加
特に運動は重要で、継続して週に1度仲間と運動している人は、7年間で日常生活活動度や運動機能にほぼ低下がなかったと報告されています。継続的な運動は老年症候群に予防的に働いていました。海外でも運動が性ホルモンの分泌を促し、認知症の予防にも有効であると報告されています。