西加奈子の自伝的エッセイ くもをさがす

サラバ!で西加奈子デビューしたものの、ずっと読んでなかったのですが、某テレビ番組で乳がん闘病のはなしを聞き、その記録のような「くもをさがす」を読みました。

【トリプルネガティブ乳がん】


作家の西加奈子さんが、家族と一緒に滞在しているカナダ、バンクーバーでコロナ禍の中で見つかったのがトリプルネガティブ乳がん。カナダの医療制度は日本と異なり、医療費が無料であるけど、発症場所が、お腹だろうと目だろうと耳だろうと、すべてホームドクター経由でないと、専門医に診てもらうことができないそう。それも何日も待たないといけない。救急病院もあるけど、緊急度が高い人からの診察なので、何時間!も待つ。そんな中で見つかった乳がん。小林麻央さんもこの乳がんだったそうです。

トリプルネガティブ乳がんは、他のタイプの乳がんに比べて進行が速く、予後が悪いと考えられていて、トリプルネガティブ乳がんを治療する薬が少ないからだとか。乳房以外にも広がりやすく、再発する可能性も高い。他のタイプの乳がんよりも悪性度(グレード)が高い。

【くもをさがす】


発覚から治療を終えるまで、およそ8か月間を詳細に描いたノンフィクション。日本との医療や医療に携わる人だけでなく、住む人たちの違いも鮮明に描かれています。著者とその家族、まわりの人々とのかかわり方は、読んでいてうらやましくなるほど。日本って思ったより、自分ひとりで解決しようと考える国なんだな、と感じました。

日本に一時帰国したときの描写、「狭さ」のくだり。そうか、日本ってこんなに狭いんだ。東京の都心部を描いているとはいえ、息が詰まってしまいました。

「くもをさがす」には、友人の鍼をしてもらう場面が出てきます。こんなふうに病院の治療もしながらでも、QOLをあげるようなお手伝いができたらな、と思いました。

この本はただの闘病記にとどまらず、毎日を送る人々の生活とともに、とりまく環境や社会制度、たどってきた歴史などもちりばめられており、自分や社会を見直すきっかけとなる気がします。

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