血糖負債とは

食べ物に含まれる炭水化物などの糖質は、体内で分解され、ブドウ糖(グルコース)に変わって血液中に取り込まれ、そこでエネルギーとして利用されます。この血液中のグルコースの濃度を指す言葉が「血糖値」です。

食事を摂った後、誰もが一時的に血糖値が上昇しますが、通常は食事から約2時間後には基準値に戻ります。この現象は、膵臓が分泌するインスリンというホルモンの働きによるものです。

インスリンには、常時分泌されて糖の代謝をコントロールする「基礎分泌」と、食後に急激に上昇した血糖値を下げるために放出される「追加分泌」があります。追加分泌が不足し、インスリンが適切に作用しなくなると、食後2時間を経過しても高い血糖値が持続する可能性があります。

食事を摂った後に2時間が経過した時点で、血液中のブドウ糖濃度が140mg/dLを超えると、「食後高血糖」という状態とされます。しかし、自らの食後の血糖値を把握するためには、血液検査や血糖値測定器などを利用する必要があります。一般的な健康診断においても、食後血糖値は通常は測定されず、高血糖の状態でも特に自覚症状が現れないため、そのまま気付かずに放置されがちです。

こうした状況が繰り返されることで、体内の血糖値が慢性的に高い状態が続くと、糖尿病と呼ばれる生活習慣病に罹患するリスクが高まります。糖尿病の怖いところは、視神経症、腎症、神経障害など、糖尿病に特有の3つの重篤な合併症をはじめ、他にも深刻な合併症が発症する可能性がある点にあります。

食後に血糖値が急速に上昇し、その後急激に下がる状態を繰り返すと、血糖値スパイクと呼ばれ、血管に大きな負担がかかり、動脈硬化を進行させる要因になります。心臓病や脳卒中、下肢の動脈疾患などさまざまな病気のリスクが高まる可能性がありますので、この状態には十分な注意が必要です。

最近では、知らず知らずのうちに高血糖の状態が続き、病気のリスクが積み重なることを、「血糖負債」と表現しています。借金が膨らむほど返済が難しくなるのと同様に、血糖負債も蓄積されれば健康な状態に戻すことが難しくなります。糖尿病と診断されていなくても、血糖負債が蓄積している人は少なくありません。ですから、血糖負債を蓄積させないよう、しっかりと予防することが重要です。

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鍼灸マッサージ師をしています。
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