腸の過敏性症候群(IBS)は、症状のタイプに応じて、主に下痢型、便秘型、混合型の3つに分類されます。通院患者の中では、男性、特に40歳未満の若い世代では、下痢型がより一般的であり、女性の場合は年齢に関係なく便秘型がより一般的です。下痢と便秘が交互に現れる混合型は、前述の2つのタイプよりも少ない傾向があります。
通常、腸の機能は、便が到達した際に便を通過させるために整然と動き、便を排出します。しかし、下痢型のIBSでは、便が通過していないのにもかかわらず、腸が不規則に動くことが特徴です。さらに、「下痢になってしまうのではないか」という心配がストレスとなり、腸の不規則運動を引き起こす悪循環も存在します。脳と腸は密接に関連しているため、「脳腸相関」という概念があります。心配事や重要なイベントが迫っていると、自律神経に異常が生じて腸が無意識に運動することが考えられます。
「過敏性腸症候群」という名称から、多くの人がまずは下痢が主な症状だと思いがちですが、実際には便秘もこの疾患の特徴の一つです。便秘型の過敏性腸症候群では、腸の運動が鈍くなり、便が体を通過するために必要な蠕動運動が弱まり、便を排出する力が不足しています。このタイプの過敏性腸症候群は一般的に女性に多く見られますが、その原因ははっきりしていません。ただ、生理周期やホルモンの影響が関与している可能性が考えられています。IBSと勘違いしていたら、実際には婦人科系の疾患が原因だったということもありますので、自己診断や簡単な判断は避けるべきです。