暑さで脳に熱がこもる~脳の熱し過ぎに注意

気温がどんどん高くなる時期。熱中症が心配ですが、脳も熱を持ちます。集中して頭を使う時、ストレスがかかる時、脳がオーバーヒートして、のぼせや疲労などにつながりやすくなります。

【暑さで脳に熱がこもる】


体を動かすと、筋肉が熱を産生し、全身が温かくなります。ですが、体の中で最も活発に動き、最も発熱しやすい部位は脳なのです。

脳は、筋肉や内臓など体内の器官の動きをコントロールします。コントローるは自律神経の働きでもあります。自律神経は生命活動の維持に不可欠で、休むことなく働き続け、常に発熱しています。自律神経に負荷がかかれば、脳の発熱量も増加します。

頭蓋骨で守られている脳は、外気にさらし、熱を発散できません。熱を冷ますためには、首や脇の太い血管を冷やしたり、鼻から冷たい空気を吸い込むしかありません。発熱が抑えきれないと、頭の中に熱がこもってしまい、脳が疲れてオーバーヒートを起こします。のぼせや疲労感、頭痛などが生じます。

自律神経の負荷を増やし、脳を疲れさせてしまう原因が大きく二つあります。一つは、環境要因で、脳の発熱を抑えられない場合です。これからの季節のように暑くなると、体温調節のために自律神経が酷使されるため、脳の温度が上がりやすくなります。また、マスクの中で温まった湿気の多い空気を吸ってしまうと、脳に熱がこもったまま冷えにくくなります。脳がオーバーヒートを起こしやすい環境にあるのです。

もう一つは、自律神経中枢の消耗です。悩みや不安などの精神的なストレスや、過労や肉体疲労などの身体的なストレスが増すと、自律神経中枢の負荷が大きくなります。その結果、脳が発熱しやすくなります。脳は体のすべての器官の動きを司っているので、脳がオーバーヒートして働きが鈍くなると、体内のコントロールが乱れてしまいます。体温や心拍、呼吸、血圧の調節などがうまくいかなくなれば、体のあらゆる臓器の働きが低下、頭痛や発熱、だるさ、めまいなど、体に不調が表れていきます。集中力やパフォーマンスの低下を招きます。体を安定した状態に戻そうと、自律神経中枢に負荷がかかり続けることになるので、脳のオーバーヒートが悪化して、さらに脳が疲労するという悪循環が生まれます。

【脳の快適な環境】

脳のオーバーヒートを予防する最も大切なのことは、自律神経に負荷をかけすぎないことです。暑い季節は、脳に合わせた環境づくりが重要です。脳にとっての最適温度、つまり脳の負荷を避け、機能を発揮しやすい室内環境は22~24度といわれています。省エネ推奨温度は28度とされていますが、脳にとっては高いのです。室温と作業効率を調べる研究では、気温が25度以上になると、1度上がるごとにパフォーマンスが2%下がるという報告もあります。

日本人は、欧米諸国に比べて筋肉量の少ない人が多く、体が発熱しにくいことから寒がりだといわれています。特に女性にその傾向が強く、エアコンが苦手だという人も多いようです。脳のオーバーヒート予防だけを考えると低い温度が望ましいといえます。

さらに、暑くなり始めると、脱水症状を起こしやすくなります。じっとりとした湿気があると汗が蒸発せず、喉の渇きを感じにくいので、水分の補給をおろそかにしがちです。その結果、血液の流れが悪くなって体に熱がこもりやすくなり、熱中症や脳梗塞などを引き起こすリスクが高まります。喉が渇いていなくても、意識的に水分を補給することが重要です。

【適度に体を動かし、脳のクールダウン】

長時間同じ姿勢を続けると、血液の流れが悪くなり、自律神経に負荷がかかります。1時間に1回は動くようにしましょう。水分をこまめに補給して血液の流れを促進し、いつもよりトイレに行く頻度を上げて立ち上がる機会を増やすことは、脳のためにもとてもいい方法です。

運動不足を感じている方は注意したいですが、身体的な疲れを感じるような激しい運動は、自律神経を酷使することになるため、脳のオーバーヒート対策という観点では逆効果です。軽いストレッチや、心臓に負荷がかからない程度の筋トレを行います。散歩は気分転換にもなり、脚の筋肉を動かすことで血流が良くなるため、脳に酸素と栄養がきちんと供給され、自律神経のバランスを維持しやすくなります。

また食べ物に関しては、鶏むね肉がおすすめです。疲労を回復するとされる成分イミダペプチド(イミダゾールジペプチド)が豊富に含まれていると考えられています。鶏むね肉を100g食べると、イミダペプチドの1日の摂取目安量である200mgを摂取できます。

加齢とともに自律神経の機能は衰えてしまうので、年を重ねるほど脳への負荷は増えやすくなります。脳が慢性的にオーバーヒートする状態が続かないように、できるだけ負荷をかけない生活を心がけましょう。

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