お腹の底から笑うと、心も体も元気になった気がしませんか?実際、笑いが心や体に良いということが、医学的に実証されつつあり、最近では病気の予防や治療においても注目を浴びています。
【笑いが体の免疫力をアップ】
若くて健康な人の体にも1日3000~5000個ものがん細胞が発生していると言われています。これらがん細胞や体内に侵入するウイルスなど、体に悪影響を及ぼす物質を退治しているのが、リンパ球の一種であるナチュラルキラー(NK)細胞です。いろいろな説がありますが、人間の体内にはNK細胞が50億個もあり、その働きが活発だとがんや感染症にかかりにくいと言われています。
笑うと、免疫のコントロール機能の中枢である間脳に興奮が伝わり、情報伝達物質が活発に生産されます。笑いがきっかけとなって作られた善玉の神は、血液やリンパ液を通じて体中へ。NK細胞の表面に付着し、NK細胞を活性化します。そして、がん細胞やウイルスなどの病気のもとを次々と攻撃、免疫力が高まります。逆に、悲しみやストレスなどマイナスの情報を受け取ると、NK細胞の働きは鈍くなり、免疫力もパワーダウンしてしまいます。
しかし、免疫力は強ければよいものでもないのです。リウマチや膠原病などの自己免疫疾患と呼ばれる病気は、免疫システムが体に悪い影響のあるものだけでなく、自分自身の体を攻撃することで引き起こされます。笑いにはこうした免疫システム全体のバランスを整える効果があることも明らかとなりました。大いに笑えば、がんやウイルスに対する抵抗力が高まり、同時に免疫異常の改善にも繋がります。
20~62歳の男女19名(うち1名は技術的に測定不能)に、約3時間漫才や喜劇などを見て、笑う体験をする実験を行いました。直前と直後に採血し、NK活性と呼ばれるナチュラルキラー細胞の働きを調査しました。
直前の値が基準値(正常範囲)より低かった5人は、笑いの体験後に全員の値が上昇しました。直前が基準値だった5人は、直後の検査で全員が範囲内でも特に高い数値を示しました。直前の値が基準値より高かった8人は、全員が基準値以上をキープしました。
結果的に、平均レベル以下の数値だった人は、笑いの体験によって軒並みNK活性が上昇し、その変化はがん治療に使われる免疫療法薬の投与による上昇速度より、はるかに速い結果となりました。
【笑いのプラス効果】
笑うと免疫力が高まるだけでなく、体にさまざまな良い効果をもたらすことがわかってきました。
①脳の働きが活性化
新しいことを学習するときに働く器官である、脳の海馬は、笑うと活性化されて、記憶力がアップします。また、笑いによって脳波のうちのアルファ波が増えて脳がリラックスするほか、意志や理性を支配している大脳新皮質に流れる血液量が増加す、脳の働きが活発になります。
②血行が促進
思いきり笑ったときの呼吸は、深呼吸や腹式呼吸と同じような状態です。体内に酸素がたくさん取り込まれるため、血のめぐりがよくなって新陳代謝も活発になります。
③自律神経のバランスが整う
自律神経には、体を緊張モードにする交感神経と、体をリラックスモードにする副交感神経があり、両者のバランスが崩れると体調不良の原因となります。通常起きている間は交感神経が優位になっていますが、笑うと交感神経が促進し、その後急激に低下することにより、リラックス効果をもたらします。交感神経とのスイッチが頻繁に切り替わることになり、自律神経のバランスが整います。
④筋力アップ
笑っているときは心拍数や血圧が上がります。呼吸が活発となって酸素の消費量も増えます。静かに過ごすより笑っているほうが、カロリーの消費量が多くなります。さらに、大笑いするとお腹や頬が痛くなるように、腹筋、横隔膜、肋間筋、顔の表情筋などをよく動かすので、多少ながら筋力を鍛えることにもなります。
⑤幸福感と鎮痛作用
笑うと脳内ホルモンであるエンドルフィンが分泌されます。この物質は幸福感をもたらすほか、ランナーズハイの要因ともいわれ、モルヒネの数倍の鎮静作用で痛みを軽減します。