オキシトシンの分泌を促す触れ合い~「手当て」の力

日々の生活や仕事、家事、育児、社会状況や環境などで、ストレスを抱える人が増えています。いつでもどこでもすぐに癒やし効果を得る方法が、手で体に触れる「手当て」です。

【手当てで出るホルモン】

私たちは、お腹が痛いときに手でお腹をなでたり、不安や緊張を感じるときに、手で頬に触れて気持ちを落ち着かせたりします。

何気なく体のどこかに手を当て、自分自身を癒やしています。信頼関係を築いている人に手で触れたり、その人からやさしく触れられたりすることでリラックスしたり、幸せな気持ちになる経験がある人も多いです。

ケガや病気などの処置をする医療行為を「手当て」といいます。言葉の由来はいろいろとありますが、私たちが普段から自然に行っている「手を当てる」ことによって得られる癒やし効果が原点ともいわれます。

なぜ手で肌や体に触れると痛みが和らいだり、心が穏やかになったりするのでしょうか。その理由の一つとして挙げられるのが「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンです。

オキシトシンは人の脳で合成され、分泌されます。主にホルモンや神経伝達物質としての働きがあります。脳から分泌されるオキシトシンの量は、親しい人と触れ合うなどによって増えることがさまざまな研究から分かっています。

愛情がこもった皮膚刺激は安らぎを与え、ストレスを緩和する、人との信頼関係を築く、母子の絆を深めるなど、さまざまな社会的行動と関わっていると考えられています。オキシトシンが「幸せホルモン」「絆ホルモン」と呼ばれるのはこの働きがあるためです。

【オキシトシンの分泌を促す触れ合い】

オキシトシンの分泌を促し、癒やし効果を得るためには次の3つのポイントがあります。

【1.お互いに触れ合うことが快適だと思える相手であること】

触れたい、触れてもらいたいという気持ちをお互いに共有することが不可欠です。触れたくない、触れてほしくないと思う相手とでは、オキシトシンの分泌量アップはあまり期待できません。

【2.自分自身がリラックスした状態で、愛情をもって触れること】

オキシトシンには相手の感情と、同調する作用があるといわれています。自分自身がリラックスした状態で人に触れることで相手もより安心できます。相手が喜びで自分もまた幸せになり、オキシトシンの分泌が促進される効果が期待できます。愛情や思いやりをもって触れることで、自分自身を癒やすことにもつながります。

相手が緊張や不安を感じていたり、興奮したりしているときにはぎゅっと圧をかけて抱きしめたり、包み込むように手を握ってあげたりすると自律神経の副交感神経が優位になり、心を落ち着かせる効果が上がります。

【3.ゆっくりと5~10分触れ続けること】

英国の神経心理学者らによって行われた研究で、1秒に5cm前後の速度でなでたときに最も気持ちよく感じるという結果が出ています。

触れる速度によって神経線維の反応が変わり、1秒に5cm前後のスピードで触れたときに反応する神経線維から、脳内の感情に関わる部位や自律神経、ホルモンの調節を司る視床下部など、さまざまな部位にゆっくりした速度で触覚情報が届いていきます。

このように触れることにより体温を一定に保ったり、血糖を一定に保ったり、ストレスを緩和したりするなどの働きが見られます。

また、スウェーデンで行われた、人間が筆でラットに触れたときのオキシトシンの分泌量についての研究では、触れてすぐの段階ではオキシトシンは分泌されないものの、5分ほど続けると分泌されるようになり、触れるのをやめてからも10分程度は分泌され続けることが分かっています。

家族など人にマッサージをしたりするときはもちろん、セルフマッサージを行うときにもゆっくりしたスピードで5~10分程度続けるのがおすすめです。

【セルフマッサージの4つのポイント】

1.ながらマッサージをしないで、自分の感覚に意識を向ける。
2.オイルやクリームを使ってゆっくり行うと、心地良く感じ、リラックス効果が高まる。
3.ゆっくり深呼吸をしながら行う。
4.背中やお腹の下(丹田)は10秒ほと手を当てて温める

不安やストレス、苦痛などを和らげて心を癒やし、親しい人とより良い関係を築くことが、「手当て」によって得られる最も大きな効用です。人に触れられることによって、ストレスで体が凝り固まっていたり、心が想像以上に疲れていたりすることに気がつくこともあります。

【当院の場合】

手当て治療は指圧が中心です。指圧は診断即治療と言われ、触感覚で、不調点をさぐり、圧することで不調点の治療を行っていく、日本で発達した治療法です。心地よさを重視し、その後に行う鍼灸治療がより効果的になります。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

鍼灸マッサージ師をしています。
当院へのご予約は、下記一番左のリンクボタン、又は右側の[ご予約]をクリックください。

目次