免疫は、病原体から体を守る大切な機能です。加齢とともに衰えていき、免疫老化が進みます。老化を防ぐには、細胞の中にあるミトコンドリアがとても重要な役割を果たしています。
【活動エネルギーを生み出すミトコンドリア】
人間の体は、37兆個とも60兆個ともいわれる数の細胞で構成されています。では、これらの細胞の活動エネルギーはミトコンドリアから得ています。細胞を動かすエンジンの役割を果たしているのです。ミトコンドリアは、1つの細胞の中に1つしかない場合もありますが、多い場合は数千個含まれています。ミトコンドリアは細胞の活動エネルギーとなるアデノシン3リン酸(ATP)を合成します。
活動に必要なエネルギーの90%以上はミトコンドリアで産生されています。それぞれの細胞に供給されています。ミトコンドリアがしっかりと働いてくれることで、それぞれの細胞が元気よく役目を果たし、生命が維持されていきます。
【免疫システムもミトコンドリアが生み出すエネルギーで機能している】
ミトコンドリアは、免疫機能にも大きな役割を果たしています。ウイルスや細菌など、異物が体内に入ると、防御機能を持っている細胞がお互いに複雑に機能しながら病原体を撃退します。そして、体外へ排出しようとします。このような体の反応を免疫といいます。免疫細胞として働く細胞を免疫細胞といいます。体内に入ってきた異物を、速攻で攻撃する顆粒球やナチュラルキラー細胞、入ってきた異物を記憶し、2回目以降に効果的に攻撃するB細胞やT細胞などがあります。
免疫細胞も、ミトコンドリアが産生するATPをエネルギー源として働きます。そのため、ミトコンドリアが十分に機能すると、免疫細胞にエネルギーが供給されていき、免疫力が維持されるのです。
ミトコンドリアはエネルギーを作り出すだけでなく、ATPを産生するときに、副産物として活性酸素も一緒に作り出します。活性酸素は、体を酸化させてさびつかせる物質で、増えすぎると、生活習慣病、がんや心臓病、脳卒中などに深く関わると考えられています。ところが、ミトコンドリアには、ビタミンEや、還元型コエンザイムQ10などの抗酸化物質が存在しているので、活性酸素がもたらす害を軽減する働きが備わっているのです。さらにミトコンドリアは、この活性酸素を逆に利用しています。病原体を駆除する際にうまく活用しているのです。そのため、活性酸素は免疫機能にも貢献しています。
また、ミトコンドリアは、免疫反応全体のバランスを取る司令塔のような役割も担います。ウイルスや細菌に感染したことで細胞が傷ついたときは、他の細胞に影響を与えないうちに、個体をより良い状態に保つために、不要な細胞を死なせて除去させます。アポトーシスといいます。さらに、免疫細胞が暴走するサイトカインストームを抑えたりもします。
【免疫老化を防ぐカギ】
免疫力は、体力などと同様、加齢に伴って低下していきます。加齢を避けることはできませんが、免疫老化を少しでも防ぐことはできます。免疫細胞の働きを元気に保つため、免疫細胞にエネルギーを供給するミトコンドリアを活性化します。
ミトコンドリアがエネルギーを生み出すために最も重要な成分が、還元型コエンザイムQ10です。還元型コエンザイムQ10は、ATPエネルギーを作り出す過程で必要不可欠な補酵素と呼ばれる栄養素です。ミトコンドリアが細胞を動かすエンジンだとすれば、還元型コエンザイムQ10は、エンジンの動きを円滑にするエンジンオイルです。
そのほか、細胞内には「長寿遺伝子」と呼ばれ、寿命に関連すると考えられている遺伝子があります。還元型コエンザイムQ10はこれを活性化していき、ミトコンドリアを元気にするという報告がなされています。
また、白血球のミトコンドリアの量を増やす働きなども報告されています。ミトコンドリアが働くために欠かせない還元型コエンザイムQ10ですが、年齢を重ねるとともに、体内の還元型コエンザイムQ10量は減少します。中高年になるほど、持続的に補うことが大切になっていきます。還元型コエンザイムQ10は、加齢だけでなく、脂質異常症の薬として使われるスタチンや、病気などによっても減少することが分かっています。
免疫は、いざというときに備えようとしても、すぐに強化できません。普段から免疫のシステムが働きやすい環境を整えておくことが大事です。ミトコンドリアを活性化し、免疫年齢のアンチエイジングを図りましょう。