入院日数が短くなっている

日本における入院日数が短くなっています。どんな背景があるのでしょうか。

日本の入院日数は、平成の時代に入ってから、目に見えて短くなりました。2016年のデータによると、平均入院日数は28.5日となっています。ところが、入院そのものは増えているのです。入院した方が、全体に占める、5日以内の短い入院患者の割合は、2002年では26.3%でしたが、2014年になると、34.1%と急増しています。入院日数が短くなった背景と、そういった現状に必要な対処についてご紹介していきます。

厚生労働省の資料によれば、今から30年前、1984年に54.6日だった入院日数は、その15年後の1999年には39.8日に、さらに15年後の2014年には29.9日へと縮小していきました。2014年の29.9日は1984年の54.6日の半分強(55%)です。その後も入院日数は減少を続け、2016年には28.5日となりました。

入院日数が長くなる「療養」、「精神」、「結核」等の病床を除く、「一般病床」だけに限ると、1984年の39.7日が、2014年にはその半分未満(42%)の16.8日に、2016年には16.2日になりました。

病気の種類別に見た入院日数でも、病気ごとに治療に要する日数の大小はさまざまですが、どの病気でも入院日数は減少してきています。2002年から2014年にかけての減少率で見ると、虚血性心疾患は、▲59.8%、白内障▲58.8%、悪性新生物(がん)▲44.3%、胃潰瘍・十二指腸潰瘍▲34.8%、結核▲31.7%、が30%を超える入院日数減少率の病気となっています。

【入院日数が短くなっている背景】

入院日数が短くなった背景には、次の2つが要因として考えられます。「医療技術の進歩」と「国の施策」です。

  • 医療技術の進歩
    内視鏡手術や腹腔鏡手術などの新しい手術方法が確立されたことにより、術創が小さく患者さんの体に負担をかけにくくなったことにより、日帰りや一泊二日などの、短い入院で手術が可能になりました。そのため、術後の回復期間も、以前のように長期にわたって取る必要性が減り、退院後の通院治療で十分、対応できるようになってきました。
  • 政府の施策
    政府は進み続ける高齢化社会において、高齢の者の入院が、とても長引きやすく、病床数が不足する推測に着目、入院する日数をできるだけ短くできるような施策を打ち出しました。生活習慣病の予防や、急性症状には大病院に入院し、症状が落ち着いてきたら小規模な病院や、地域の診療所に通院して診療を受ける、場合によっては家庭で訪問診療を受けるなど、医療機関の機能分化を進めているのです。

【国際的にみると】

OECD(経済協力開発機構)の調査結果からみると、短くなってはいるものの、それでも日本の入院日数は他の国に比べて、突出して長いことがわかります。国によって入院の定義が違っていたり、文化的な背景が異なっていますから単純に比較することはできませんが、国際的にみると、日本は入院日数の長い国であることは間違いないようです。入院日数の短期化が続いていますが、それでも国際的にみると、わが国の入院日数は、目立って長いのです。

【対応するべきこと】

医療技術が飛躍的に進歩し、医学的には退院しても大丈夫と告げられても、日帰りや一泊などの短期間で退院することは、患者さんやご家族の心理的な了解が追いつかない場合があります。もし、不安感、不明な点があるときは、入院前や入院中に看護師や、病院に配置されているソーシャルワーカーなどに相談することをおすすめします。

退院後も身体的なケアにとどまらず、精神的なケアも合わせて受けることができます。また入院期間が短くなることは、受け入れる家族にとっても「早く戻ってきてくれて嬉しい」という喜びと安心感がある反面、「家庭で自分たちが、この先のケアをやっていけるのだろうか」などの身体的、精神的負担や心理的不安が増える面があることも無視できません。受け入れる家族の立場としては、退院してきた患者さんに、家族としてどのようなケアが必要なのか、ケアができるのか、地域の医療機関とどのように連携できるのかなど、日頃から具体的に調べたり、聞いておくと安心です。

〔例〕
・日常生活で、してはいけないことはありますか?
・日常生活で気を付けることはありますか? (食事、運動、排尿、排便、入浴、外出、旅行、仕事など)
・(休職していた場合)いつから職場に戻れますか?
・すぐに連絡した方がよい症状などがあれば、 教えてください。
・緊急時の連絡先を教えてください。

【入院日数はもっと短くなる傾向】

今後も医療技術はどんどん進歩していきます。国の施策も続いていきます。そのため、入院日数の短期化も進んでいきます。いざというときに慌てないよう、入院期間や退院後のケアについて、日ごろから検討しておくことをおすすめします。

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この記事を書いた人

鍼灸マッサージ師をしています。
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