長引く咳~結核ということもある

結核は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)という細菌に感染して起こる慢性の感染症の病気です。結核菌を含んだ空気を吸い込み、感染します。肺に感染して症状を引き起こすので、咳や痰などが主要症状です。結核菌はとても小さな細菌で、感染した人が咳やくしゃみをすることで空気中に広がります。

症状は、無症状から人工呼吸器を使うくらい重症なこともあり、咳や痰に血が混じったり、胸が痛むなどの呼吸器の症状、発熱、寝汗、体重減少、食欲低下など、様々な全身症状がおこります。体内に潜伏したまま長い間発病せず、免疫力が落ちた時に発病することもあります。

戦前の日本では、結核など感染症の流行があり、それらの死亡率がとても高い水準でした。終戦前後からの予防接種やレントゲン診断、結核治療薬などにより、結核による死亡者数は1947年の146,241人をピークとして減少してきました。

しかし、実のところ、2020年時点で、毎年15,000人以上の発症数、そして2,000人前後の死亡者数となっています。これは先進諸国でも高く、結核を過去の病気とは言い切れない状況となっています。

特に60歳以上の高齢者における発症例が多く報告されています。幼少期の結核菌の暴露経験によるものと推定されています。また、海外でも結核が蔓延している地域が存在します。海外から日本へ結核が持ち込まれる事例もあります。

【日本の現状】

世界的に見て、日本での結核の感染者数は、途上国より少ないといえますが、欧米と比較すると2~4倍多いのです。日本では高齢者が結核を発病することが多く、60歳以上が70%を占めています。最近では、海外からの労働者の増加とともに、外国籍の結核患者も増えています。また、医療の発達に伴い、抗がん剤や免疫力を低下させてしまう薬を使用している方が結核を発症する場合も多くなっているようです。時折、学校、病院等で集団発生することもあり、早期診断が重要となっています。

【結核の感染経路】

結核は、結核菌に感染することで発症する感染症です。空気中に存在する結核菌を吸い込み空気感染します。そのため、肺に影響が及ぶことが最も多いです。

肺に入った結核菌は、症状を引き起こさず肺内に居座ることがあります。感染者の免疫力の低下で活動を始め、症状を引き起こしていきます。

また、結核菌が血液やリンパの流れで体中に広がり、重篤な粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)や結核性髄膜炎(けっかくせいずいまくえん)などを発症することもあります。

粟粒結核とは体中に結核菌が拡散してしまっている状況を指します。免疫力の低下で発症のリスクが高まります。ステロイドの長期服用中や、がんの罹患、HIV感染、高齢者などがリスク因子となります。

【結核の症状】

結核の症状は、2週間以上持続する咳があることが多いです。体重減少や全身倦怠感を呈することもあります。ただ、高齢者や乳幼児の結核では呼吸器系の症状がはっきりしないこともあり、め診断や治療が遅れてしまうことがあります。また、粟粒結核の発症では、結核菌が侵入した臓器の症状を呈するようになります。たとえば、中枢神経に結核菌が蔓延した場合は、頭痛や吐き気、視力障害、けいれんなどの症状が現れることがあります。

【結核の検査・診断】

胸部レントゲン検査やツベルクリン皮膚試験(結核菌から抽出した抗原を皮膚に注入し反応性を見る検査)、インターフェロンガンマ遊離試験(結核感染を評価するための血液検査)などが診断の手がかりとなります。

ツベルクリン皮膚試験とインターフェロンガンマ検査は、結核菌の感染を評価するふるい分け(スクリーニング)検査とされています。インターフェロンガンマ検査は、一回の血液検査で結核菌への感染状況をよく判定できる簡便な検査です。

通常、結核は痰の検査で診断します。痰の中の結核菌を顕微鏡で観察したり、培養したりして結核菌が生えるか検査します。しかし、結核菌は培養の時間が長くかかるため、診断に時間がかかったり、診断がつかないこともあります。また、痰が出にくい場合には、レントゲンや胸部CTなどの画像検査をしたり、血液検査などを組み合わせ、臨床的に診断をすることもあります。

【結核の治療】

以前は、治療薬がなく結核の治療はひどく難しいものでした。1944年に、治療効果の高いストレプトマイシンが開発されました。しかし一つの薬による治療は、薬が効かない耐性菌が現れてきます。結核をしっかりと治すには、複数の薬を最短6カ月程度内服することが必要です。治療にかかる費用は、公費の補助を受けることができます。

結核は少なくなっているとはいえ、過去の病気ではありません。長引く咳がある場合には医療機関を早めに受診するようにしましょう。

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この記事を書いた人

鍼灸マッサージ師をしています。
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