寝不足のリスク~睡眠に必要な条件3つ

厚生労働省、令和元年「国民健康・栄養調査」調査によると、日本人の約40%の睡眠時間は6時間未満、5人に1人は「睡眠の質に満足できない」と感じているそうです。テレビやスマホでの夜更かし、夜遅くまでの勉強や仕事などが、慢性的な寝不足や睡眠の乱れを招いています。睡眠不足は、様々な生活習慣病、循環器疾患、うつ、認知症、免疫力の低下のリスクを上げることがわかってきました。

睡眠の機能

厚生労働省、令和元年「国民健康・栄養調査」調査によると、男性の37.5%、女性の40.6%の睡眠時間は6時間未満です。「睡眠全体の質に満足できなかった」人の割合は男性 21.6%、女性22.0%。「日中、眠気を感じた」人も男性32.3%、女性36.9%と、睡眠に不満を持つ人が多い現状となっています。睡眠が確保できない理由として、20代では「就寝前に携帯電話、メール、ゲームなどに熱中すること」、30~40代男性では「仕事」、30代女性では「育児」と回答した人の割合が高く、各年代におけるライフスタイルの影響を強く受けており、睡眠問題の改善は容易いものではないようです。

そもそも、眠りはどうして必要なのでしょうか。

青山・表参道睡眠ストレスクリニック院長の中村真樹先生は「睡眠には、記憶の整理のほか、脳や体の疲れをとり、体の成長を促し、傷ついた細胞を修復するという大切な役割があります」としています。

「睡眠にはサイクルがあり、大脳を休める”ノンレム睡眠”と夢を見る浅い睡眠の”レム睡眠”とが約90分周期で繰り返されます。また、さらにノンレム睡眠の中にも非常に深い眠りと比較的浅い眠りがありますが、特に、深いノンレム睡眠時は、脳の疲労が回復されるとともに、筋肉や骨を発達させたり傷の修復を促したりする成長ホルモンがさかんに分泌されています」(中村先生)。

睡眠は私たちの心身の健康を支えるための、大切な仕組みです。ですが、現代人はついつい睡眠をおろそかにして、時間を削ってしまいがちです。「睡眠は我慢すれば削れるものですが、生命活動において睡眠が不要なら、進化の過程でなくなるか、もっと短くなったはずです。人間には、寝なければいけない理由があるのです」(中村先生)。

睡眠に必要な条件

生きるために欠かせない睡眠。では、「良い睡眠」とはどのようなものをいうのでしょう。

「『睡眠時間が短くても、睡眠の質を上げればいい』と思うかもしれませんが、医学的、生物学的に見ると、睡眠には3つの条件がそろうことが必要です。その条件が、十分な睡眠時間(量)、安定した眠り(質)、規則正しい睡眠(リズムまたはタイミング)です。いずれか一つでも欠ければ睡眠は乱れ、健康に影響が出てきます」(中村先生)。

条件1:十分な睡眠時間(量)

「全米睡眠財団が推奨する睡眠時間は、年齢ごとに異なりますが、就学・労働世代の15~65歳では8時間前後の睡眠時間が理想的とされています」(中村先生)。日本の30~50代男性、40~50代女性では睡眠時間が6時間未満の人が5割前後と、睡眠不足の人がとても多いのです。

条件2:安定した眠り(質)

良い睡眠のためには、睡眠の「質」も重要。寝付きが悪い、夜中にたびたび目が覚める、といった不眠、寝ている間に呼吸が止まる、睡眠時無呼吸症候群、寝ているときに脚に不快感が生じる、むずむず脚症候群、といった病気があると睡眠の質は低下します。

条件3:規則正しい睡眠(リズムまたはタイミング)

人間の体には、体温やホルモンの分泌、自律神経の働きを変動させて休息モードと活動モードを切り替え、体のリズムを作るシステムが備わっています。それを司るのが体内時計です。ところがこの体内時計は放置すると約24時間より少しだけ長いサイクルになるため、1日とのずれが生じます。このずれをリセットするのが、朝の光です。しかし、夜更かしなどで起床時間が遅くなってリセットがずれると、睡眠と覚醒のリズムが乱れます。「概日リズム睡眠障害」といいます。「コロナ下では、こうしたリズムの乱れを起こす人が増えました」と睡眠総合ケアクリニック代々木理事長の井上雄一先生は指摘します。

また、最近話題なのが「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)」です。ソーシャル・ジェットラグとは、週末に平日より長く寝てしまうことで睡眠のリズムが後ろにずれ、あたかも海外旅行のときの時差ぼけのような状態になることをいいます。就寝時間と起床時間の中央の時刻が平日と休日で2時間以上あるとソーシャル・ジェットラグを起こしやすくなります。ソーシャル・ジェットラグでは体内時計がずれるので、翌週の前半の眠気や疲労感が強くなります。「なるべくリズムを乱さないような生活を心がけましょう」と井上先生はアドバイスします。

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鍼灸マッサージ師をしています。
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