週150分以上の運動で転倒リスクが低減

世界保健機関(WHO)によると、心と体の健康を維持するためには週に150〜300分の中程度の運動が推奨されています。これまでの研究では、運動量と転倒、けがとの関連について一貫した結論が得られていませんでした。高齢女性がどのような運動をどれだけ行っているかと、転倒やけがとの関連を調査するために、一般集団を対象としたコホート研究を行いました。

この研究では、オーストラリア女性の健康についての長期研究データから、特定の期間に運動状況や健康情報を提供した7139人(平均年齢67.7歳)を対象に解析を行いました。2016年の調査では、参加者に早歩き、中強度の運動(ライトテニスや水泳など)、高強度の運動(激しい有酸素運動やランニングなど)の種類と週に行う運動の量(0分、1〜150分未満、150〜300分未満、300分以上)を尋ねました。また、2019年の追跡調査では、前の12ヶ月に転倒した回数やその時にけがをしたかどうかを調査しました。

主な結果は次のようになりました。

・7139人の被験者のうち、2012人(28.2%)が過去12ヵ月間に転倒したことがありました。この中で、996人はけがを伴わない転倒、1016人はけがを伴う転倒でした。
・運動を行わなかった(週間0分)グループと比較して、1~150分/週のグループではけがを伴わない転倒のオッズ比(OR)は0.88(95%信頼区間[CI]:0.71~1.10)で、有意な関連は見られませんでした。150~300分/週のグループでは0.74(0.59~0.92)、300分以上/週のグループでは0.66(0.54~0.80)と、関連が認められました。
・けがを伴う転倒のORは、1~150分/週のグループが0.87(95%CI:0.70~1.09)で同様に関連性が見られず、150~300分/週のグループは0.70(0.56~0.88)、300分以上/週のグループでは0.77(0.63~0.93)と関連性が認められました。

各種類の運動を比較すると、早歩き(OR:0.83 [95%信頼区間:0.70~0.97])、中強度の運動(0.81 [0.70~0.93])、および中~高強度の運動(0.84 [0.70~0.99])を行っているグループでは、転倒時のけがのリスクが低くなっていました。一方、高強度の運動を行っているグループはリスクの低下傾向が見られましたが、統計的に有意ではありませんでした(0.87 [0.74~1.01])。

まとめると、7000人を超える高齢女性を対象にした研究では、週に150分以上の余暇の運動を行うことが、転倒時にけがを伴うリスクとけがを伴わない転倒の両方のリスクを有意に低減することが示されました。

全ての運動の種類とけがを伴う転倒との関連については、統計的に有意な関連は見られませんでした。

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