10秒呼吸法で不安をなくす

生きるために必要不可欠な呼吸。実は姿勢やメンタルにも深く関わっています。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用で猫背の姿勢が続くことで知らず知らずのうちに呼吸が浅くなったり、不安やストレスなどによって呼吸の回数が多くなったりしている人も少なくないようです。姿勢を改善し、深くゆっくりした呼吸に整えるための「10秒呼吸法」をしてみませんか。

【呼吸筋とは】

呼吸は肺が行うもの、と考えている人は多いと思います。実は、肺はふくらんだり縮んだりすることはできません。肺は胸郭という肋骨で覆われた部屋に取り囲まれていて、この胸郭が広がることで空気が入り、胸郭が狭くなることで空気が出ていきます。こうした胸郭の拡大や収縮を起こすのが、胸郭のまわりの筋肉です。

この胸郭を動かし、呼吸に関わる筋肉のことを「呼吸筋」といいます。横隔膜は代表的な呼吸筋の一つですが、この他にも胸やおなか、背中などに多くあります。

横隔膜の働きに加えて、呼吸筋の柔軟性と活動を高めることで胸郭可動域が広がるので、空気をしっかり吸えて、しっかり吐けるようになります。

さらに呼吸筋には、空気を吸うための筋肉である吸息筋(きゅうそくきん)と吐くための筋肉、呼息筋(こそくきん)の2種類があります。吸息筋は主に胸より上に、呼息筋はおなかのほうに集中しておりバランスを取り合って呼吸を整えます。

【姿勢の悪さが呼吸筋に影響】

立っている時、歩いている時、座っている時、知らず知らずのうちに猫背になっていることはありませんか?猫背になると胸郭が広がりにくくなりますが、これは肩甲骨が正しい位置にないからです。菱形筋(りょうけいきん)自体は呼吸筋というよりも、肩甲骨を内側に引きつける筋肉ですが、菱形筋の活動が低下すると肩甲骨が外側に開き、猫背になりやすくなり胸郭の動きが制限されてしまいます。

さらに、デスクワークが中心だったり、スマートフォンやパソコンなどを長時間見る生活を続けたりすることの多い現代社会では、どうしても姿勢が悪くなりがちです。息を吸う時の小胸筋(しょうきょうきん)が硬くなると、胸の前側から肩甲骨が引っ張られるような感じになりやすくなり、肩こりの原因にもなります。こうした姿勢は、胸郭の動きが制限されるので、呼吸が浅くなります。身体に必要な空気を取り込むためには、呼吸の回数を増やして対応することになります。

【不安が多いと呼吸回数が増えやすい】

呼吸には大きく次の3つの働きがあります。

1.生きるため:生命を維持するため、呼吸して体内に酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出します。

2.話すため:話す、歌うなど「音」を出すうえで呼吸は不可欠。自分の意志で呼吸の深さやリズムを変えることができます。

3.感情で変化します:喜怒哀楽の感情に伴って呼吸の深さや速さ、回数などが変化します。

注目なのは、感情で変化する、ということ。怒りや悲しみなどのネガティブな感情になった時に呼吸が乱れたりするような経験があると思います。不安やストレスなどが多いと、呼吸が浅く、速くなり、1分間の呼吸回数が多くなり、不安などが少なくリラックスしていると、呼吸が深く、ゆっくりしたスピードになり、1分間の呼吸回数が少なくなります。

このことは平均年齢20.8歳の男性16人を対象に行った研究で明らかになりました。不安スコアが小さい人ほど呼吸回数が少なく、不安スコアが大きい人ほど呼吸回数が多いという結果になったのです。

不安やストレスが多いと呼吸が浅くなりやすいですが、その一方で姿勢の悪さなどから胸郭の動きが制限されて呼吸が浅くなってしまい、呼吸数が増えていきます。さらに不安やストレスが助長されてしまう可能性もあります。浅くて速い呼吸が続くということは、常に不安にさらされていることを意味します。深呼吸を意識して、と頭で考えていも、さあいまからやろうか、と思いついたり、持続させることは難しいです。

【10秒呼吸法】

そこで、簡単にできて効果的な10秒呼吸法をご紹介します。

10秒呼吸法は10秒で吐く→吸うを1回行います。朝~寝る2時間くらい前までは、5秒吐く→5秒吸うで行います。最初に吐くことから行います。ゆっくり細く長く吐きます。吐き出してしまえば、吸うことは意識しなくても勝手に吸っていることが実感できるはずです。この「吐く」ことがポイントで、からだの二酸化炭素を少しでも多く吐き出すと、勝手に酸素を多く吸うことになります。つまり、知らず知らずのうちに深呼吸になるのです。

10秒呼吸法をまずは1分、6回してみましょう。からだの隅々に新鮮な酸素がいきわたることが感じられると思います。できるようになったら、10分間やってみましょう。

寝るまでに2時間を切ったら、6秒吐く→4秒吸う、または、7秒吐く→3秒吸う、にします。こうすることで眠りやすくなります。

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この記事を書いた人

鍼灸マッサージ師をしています。
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