生活習慣病を予防するメタボ健診

【メタボ健診とは】

特定健康診査(特定健診、よく聞かれる言葉で「メタボ」(メタボリックシンドローム)健診)は、日本人の死因の約6割を占める、生活習慣病や悪性新生物である、がん等の予防をめざし、2008年度から、40~74歳までの人を対象にスタートした健康診断です。

それまでの健康診断は、予防ではなく、生活習慣病や、がん等の、早期の発見や、早期の治療に重点が置かれていました。ところが、健康診断後に開催される、事後指導や健康教室に参加されるのは、健康意識の高い人や女性などが多く、本来一番受けてほしい、メタボ該当者や予備群の男性は「仕事が忙しくて行けない」「そんなことよりも仕事が優先」などを理由に、保健指導をあまり受けていないのが現状であったのです。

メタボリックシンドロームを説明をすると、内臓脂肪が異常に蓄積して、血糖、血圧、脂質に正常を超えて異常をきたす症候群(病名ではなく、症状)で、糖尿病や、心筋梗塞など、循環器系の疾患、いわゆる心血管疾患になるリスクを高めます。抗動脈硬化作用を持つアディポネクチンという善玉物質が減少し、心筋梗塞などの動脈硬化を進めるのです。メタボ健診では、保健指導の対象になるかどうかを判断していき、必要度に応じて、保健指導(積極的支援や、動機付け支援)をしています。

メタボ健診では、内臓脂肪を測定することができないため、内臓脂肪の面積と相関する腹囲の計測が、その後に健診項目として加わりました(内臓脂肪面積100㎠ ≒ 腹囲85cm(男性)、90cm(女性))。ところが、日本と海外とのメタボの基準が異なることから「女性よりも男性の方が腹囲の基準値が厳しいのはおかしいのではないか」と疑問を呈する人もいました。また、中には「肥満=メタボ」と勘違いしている人もいたのです。

一般住民を対象とした研究から、メタボの人が心筋梗塞などの心血管疾患になるリスクは、非メタボの人に比べて、2~3倍とされています。その原因は、普段の食生活における食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足などにあるといわれています。

【メタボ健診の変遷】

第1期(2008年度~2012年度)の頃は、メタボの改善や予防の保健指導も手探り状態でした。保健指導の効果はというと、指導を受けなかった人が、0.42kg減、に比べ、積極的支援を受けた人は、1.98kg減。やなり積極的支援を受けた人の方が1年後の体重減少は大きかったのです。2kg弱の減少はたいしたことはないのでは、と考える人もいるかもしれません。肥満体重の3%程度=60kgの人なら1.8kg、の減量でも、血糖・血圧・脂質異常の改善が認められています。つまり、2kg程度の減量を「維持」することが大切なのです。

第2期(2013年度~2017年度)の特定健診では、透析予防など、重症化予防の視点が加わりました。2015年度の特定健診の実施率は約2,706万人で、50.1%。健診を受けた人の中で、特定保健指導の対象になったのが約453万人でした。が、対象者のうち、特定保健指導ができたのは、約79万人と、2割以下なのです。残りの8割以上の人は特定保健指導ができていませんでした。このように、メタボ健診についての認知度は10年前と比べるとかなり高まったのですが、改善・予防への対策は、まだまだといったところでした。

2018年度からは第3期(~2023年度)の特定健診が始まり、運用面の改善が行われました。健診受診後に、初回の面接を行ったり、ICTを用いた遠隔医療の活用なども考えられています。また、レセプト情報と特定健診等情報を突合したデータベース化も着手されており、ビッグデータの解析もできるようになってきました。この新しい特定健診や特定保健指導を、積極的に受けてみるようにしてはいかがでしょう。

【糖尿病のリスク】

メタボの病気のリスクで代表的な2型糖尿病。その理由は、メタボの人の場合、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪くなるからです。

また、メタボの人は、透析や腎移植などを必要とする、末期腎不全の原因ともなる慢性腎臓病(CKD)にもなりやすいことが知られています。末期腎不全とは、腎機能が低下してしまい、身体から老廃物の排出が不能となる尿毒症となってしまい、腎機能がおおよそ10%以下に、透析や腎移植が必要な状態のことをいいます。喫煙者でかつメタボの人は、この慢性腎臓病になりやすいことが知られています。それ以外にも、タバコを吸うと認知症や心疾患にもなりやすいことが知られています。早急な禁煙が望まれます。

さらに、中年期にメタボだった人は将来、認知症になるリスクも高まるそうです。その詳細なメカニズムについてはまだ不明ですが、心血管疾患や糖尿病の予防だけでなく、将来の認知症予防のためにも、メタボを予防、またはメタボを解消しておくことが大切なのです。

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